2011年12月15日木曜日

SAM前世療法の確立その6

(その5からのつづき)


(6) 「魂遡行催眠」によって前世人格が顕現化する現象
魂遡行催眠においてもっとも特殊な、奇想天外な技法は、最終段階で、人差し指に潜在意識を宿らせ、その潜在意識を担わせた人差し指に、「魂状態の自覚」まで導かせるという技法でしょう。
この技法の着想は、前述作業仮説の⑤⑥から生み出されたものです。
つまり、潜在意識の座は脳ではなく、身体全体を包む霊体に存在するわけですから、身体のどの部分であっても霊体(潜在意識)によって包み込まれていることになります。
霊信によれば、霊体の色がオーラであると告げています。
そして、里沙さんをはじめとするオーラが感知できる人々は、身体の不調部分のオーラの色が黒ずんで見えると言います。
こうした事実を認めるとすれば、霊体と肉体は相互浸透関係にあり、霊体は半物質的性格を持つであろうと思われます。だからこそ、物質である肉体の不調が霊体に反映するということでしょう。
この着想に基づいて、十分に深い催眠状態にまで誘導後、具体的には次のような暗示をします。
「今、私の手の平が包みこんでいる、あなたの人差し指が、これから潜在意識を担います。指そのものが潜在意識として働きます。潜在意識は魂の表層のものたちが作り出していますから、潜在意識が魂状態を一番よく分かっています。そこで、この人差し指つまり、潜在意識に魂状態まで導いてもらおうというわけです。これから、人差し指がこのように上下運動を始めます。一往復するたびに魂状態に導きます。やがて、魂状態に至ると、指は上下運動を止めてそれを知らせてくれます。さあ、私が支えを取っても指は動いて導きます」
作業仮説からすれば、肉体のどの部分にも霊体の持つ潜在意識を宿らせることが可能なわけで、手首を立てたり伏せたりさせることも実験しましたが、魂状態に至るまでの時間が5分以上かかると、手首の疲労が大きいという被験者の報告が少なからずあったので、結局、上下運動の負担の小さい人差し指に落ち着いたということです。
こうした魂遡行催眠を100例以上試みる実験を繰り返しました。
果たして、良好な催眠状態に入りさえすれば、例外なく、魂遡行催眠を始めて約5分後には「魂状態の自覚」に至ることが明らかになりました。
催眠誘導を開始してからの時間では、25~30分かけて魂状態の自覚に至ることになります。
魂状態の自覚について被験者の多くは、体重の感覚がなくなり、「私という意識だけ」としかいいようのない状態になる、肉体から意識が離脱しているといった感覚になる、と報告しています。
そして、「魂状態の自覚」にさえ至れば、呼び出しに応じて魂の表層に存在している前世のもの(人格)が顕現化するという現象が確認できていったのです。
この前世の人格が現れて自分の人生を語るという意識現象の事実は、次のような「タエの事例」の印象を裏付けるものでした。 
それは、前世の記憶をイメージとして見ているのではなく、完全に前世の人格と一体化し、今、再体験しているのだという実感と臨場感があり、その迫力に驚愕し圧倒されました。
さらに言えば、前世の記憶を現世の里沙さんが想起して語っているというよりは、「前世の人格そのもの」が現れ、自分の人生での溺死の場面を再現しているという強烈な印象を与えるものでした。
つまり、里沙さんが、タエであった「前世記憶の想起」をしたのではなく、彼女の魂の表層に存在するタエという「前世の人格」が顕現化し、その人生の場面を語ったという解釈こそ、妥当なものではないだろうか、ということです。里沙さんのような特異な催眠感受性の持ち主は、「魂遡行催眠」を経ずして、一気に魂状態への遡行ができ、タエの人格が顕現化したのだと思われるのです。
また、イアン・スティーヴンソンも、『前世の言葉を話す人々』春秋社、の中で、催眠中に真性異言を話す当事者を「トランス人格」(同書九頁)と呼び、深い催眠状態において被験者とは別の前世人格が顕現化しているととらえているようです。
こうして、一連の霊的作業仮説に基づいて、魂の自覚状態に遡行させ、魂の表層に存在する前世の人格を呼び出す、という作業仮説による前世療法は成り立つ可能性があるはずだ、と試みることへの期待を深めました。
そして筆者は、この霊的作業仮説による前世療法を、ワイス式と区別するために、「SAM(サム)前世療法」と名付けることにしました。
SAMのSはソウル、Aはアプローチ、Mはメソッドの頭文字を意味します。つまり、「魂に接近する方法」という意味を指しています。したがって、「SAM前世療法」とは、「魂に接近する方法による前世療法」ということを意味しています。
応答型真性異言現象をあらわした前世人格ラタラジューは、SAM前世療法によって顕現化した前世人格です。
しかも彼は、ネパール語で対話中に、現在進行形の対話をしています。
つまり、対話相手のカルパナさんに「あなたはネパール人ですか?」と問いかけ、そうですよと回答されて、「おお、私もネパール人です」と喜びをあらわしています。
この事実は、被験者里沙さんの前世の記憶の想起だとは解釈できません。
前世人格ラタラジューが、いま、ここに、顕現化しており、現在進行形でカルパナさんと対話しているとしか言いようのない現象です。
(つづく)

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