2018年2月16日金曜日

SAM催眠学序説 その110

インナーチャイルドは「記憶」か「人格」か


 一般的なインナーチャイルド療法は、記憶催眠(深い深度の催眠)まで誘導の後、年齢退行によって「傷ついている子どもの意識」を呼び出し、癒すということになっています。
一般的に「インナーチャイルド」とは、「内なる子ども」と訳されますが、具体的には子ども時代の記憶や心情、感傷のなどを指しているようです。
しかし、インナーチャイルドは、ほんとうに「子ども時代の心情、感傷の記憶」なのでしょうか。

SAM前世療法の作業仮説では、魂は二層構造になっており、その表層は前世のものたちによって構成されていると考えています。
ミラーボールの球体表面に一枚一枚の鏡の断片が張り付いているように、魂の表層は、一人一人の前世のものたちが張り付き構成していると考えるといいかもしれません。
それら前世のものたちが潜在意識・意識を作り出しているということもSAM前世療法の仮説です。

そして、魂の表層には、前世のものと同時に「現世のもの」が位置付いています。この「現世のもの」は、現世に誕生して以後の現世での潜在意識・意識を作り出しているものということになります。
したがって、魂の表層の「現世のもの」の内部にインナーチャイルドが内在していると考えられます。

インナーチャイルドに出会ったのは、私が40代の終わり、現職の小学校教頭であったときです。
私は37歳で上越教育大学大学院で2年間の留学研修を終えて教育現場に復帰し、教頭職にあって教育催眠を生徒指導面に応用する臨床研究に没頭していました。
そうした中で、小学4年生男子の「夜驚症」の改善を母親から依頼されました。

夜驚症とは、睡眠中に突然起き出し、叫び声をあげるなどの恐怖様症状を示す症状のことで、数分から十数分間症状が続き、夢とは異なり目覚めた時に本人はそのことを覚えていないのが普通のようです。
成長とともに自然に治まるとされていますが、母親には心配でたまらなったようです。
そこで、家庭訪問で、この男子児童を記憶催眠(自分の名前が抑制されて想い出せない催眠深度)まで誘導し、年齢退行によって夜驚の原因の記憶を探ってみました。
なんと現れたのは2歳時の記憶であり、小児病棟で一人で寝ることの寂しさと悲しみ、母親からの見捨てられ不安を泣きながら訴えました。
この意識現象のありのままの事実と実感は、「悲哀の記憶」ではなく、「悲哀に苦しむ2歳児人格の訴えそのもの」と現象学的に解釈するほうが適切だという強い印象でした。

つまり、強烈な悲哀を体験した2歳児の思念の集合体は、成長していく本体の人格から分離し、取り残され、当時のままの幼児人格として潜在意識下に生きており、睡眠中に顕現化し、恐怖や不安を訴えているのではないか、という解釈をすることでした。
つまり、インナーチャイルドとは、「子ども時代の記憶や心情、感傷」ではなく、「強烈な悲哀を体験した結果、成長していく本体の人格から分離され、取り残されてしまった残留思念の集合体としての子ども人格」ではないかという仮説を持つことになったというわけです。


こうした仮説に基づき以下の手順で、SAM前世療法によるインナーチャイルド療法を実験的におこなってみました。
被験者は32歳男性です。
彼は、自分に向けられた叱声はもちろん、他人が受けている叱声にも過剰に反応し、異常なほどの恐怖感と激しい動悸に襲われるという症状を持っていました。
特に大声で叱声を浴びると、耐えられないほどの恐怖と動悸に襲われると訴えました。
そこで、仮説に基づくインナーチャイルド療法を以下の手続きでこころみることにしました。

1 魂遡行催眠まで誘導し、魂の自覚状態に至っていることを確認する。

2 魂の表層の「現世のもの」を呼び出す。

3 「現世のもの」の内部に存在し、症状を作り出している「子どもの私」を呼び出す。

4 「子どもの私」がどのような原因から傷つきを持ち、苦しんでいるのかを聞き出す。

5 苦しみに共感的理解をしてやりながら、分離され取り残されている「子どもの私」に 「成長を続けている私」と一つになるように説得する。

セッションの結果、呼び出しに応じて現れた被験者の「子どもの私」は3歳でした。
子どもどうしで遊んでいるときに、遊び相手の子どもが、大声でわめきながら、奪い合いをしていたオモチャで気を失うほど激しく殴ったということでした。
その傷つきの恐怖体験によって分離した「子どもの私」が、類似のことが起こる場面に遭遇しそうな度に、恐怖感と動悸を起こさせて、警告しているということでした。
こうした語りをしてもらった後、この「子どもの私」にヒーリングをし、大人の私と一つになるように説得してセッションを閉じました。

同様の手続きによって、会食するときに限って腹痛を起こさせている小学1年生の女児のインナーチャイルド、男性と親密な人間関係になることを拒否している小学6年生女児のインナーチャイルドの顕現化の事例があります。
 前者のインナーチャイルドは、学校給食で食べ残しを許されず、無理矢理担任教師から毎日居残りで完食することを強制されていた小学1年の女児でした。クライアントは40代女性です。
 後者のインナーチャイルドは、父親から性的暴力を受けていた小学6年生の女児でした。クライアントは60代女性です。


以上のようなSAM前世療法によるインナーチャイルド療法の改善効果の累積と検証はこれからの課題です。
インナーチャイルドとは、「子ども時代の記憶や心情、感傷」ではなく、「強烈な悲哀を体験した結果、成長していく本体の人格から分離され、取り残されてしまった残留思念の集合体としての子ども人格」ではないか、という私の現象学的仮説を否定するような意識現象の事実は現時点では確認されていません。
ただし、私の仮説は、催眠学上の「人格催眠」レベルで現象化する「人格変換」や「役割演技」という解釈も成り立つ余地があります。
つまり、「子ども時代の心情、感傷の記憶」の想起が、あたかも子どもの人格を装って顕現化した、という解釈もできるということです。

インナーチャイルド、未浄化霊、生き霊などの意識現象の顕現化を知れば知るほど、「意識」の謎は深まるばかりです。

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